aiueoworld’s 小説

藍 宇江魚の小説 エッセイ集

2021-01-01から1年間の記事一覧

遠巻きの寛容 第4話「告白」

体調不良を理由に長期休暇を取った開斗が出社をしなくなると、祐平に対する妙な噂話が社内で一気に広がり始めた。 そんな矢先のある日、祐平は若杉と飲んだ。 「島村と連絡は?」 「休暇届けのメールが最後です」 「メールってお前、一緒に暮らしてるだろう…

遠巻きの寛容 第3話「疑心」

朝。 開斗は玄関で祐平の背中を抱いた。 「こらっ」 「会社じゃ出来ないし」 「遅れるぞ」 「上司もね」 二人、笑う。 「今夜、社長と飲むの?」 「うん。先に寝てて良いよ」 「飲み過ぎないように」 「わかってる」 二人はキスをした。 * 「やれやれ。ここ…

遠巻きの寛容 第2話「虚実」

「桜井」 祐平は開斗を押し離した。 「セクハラだぞ」 「俺、本気ですよ」 「わかった。だが、今夜は帰って寝ろ」 「祐平」 「編集長だ」 * 午前5時前。 ホテルの自室で目覚めた祐平はベッドを出て窓の外を眺めた。 彼の目に蒼白い都会が酷く生彩を欠いて…

遠巻きの寛容 第1話「理由」

1990年3月7日、水曜日。曇天。 神保町、時刻観書店。 仕事で必要な本を探しあぐねた桜井祐平は、近くの若い男性店員に声を掛けた。 「はい。何か?」 「この本、あります?」 祐平、メモ書きを彼に渡した。 「少々お待ち下さい」 彼はすぐ戻ってきた。…

黒と白

寝室の姿見鏡に映る自分を見ながら哲司は顔をしかめた。 「喪服に白いマスクはなぁ…」 独立前に勤めていた会社で入社以来世話になった上司にして、自分の会社の主要取引先の社長が急逝し、その日の午後に社葬が執り行われる。 「社葬だろ。マスクは黒の方が……

傘男

あれは、澄み切った夜空にぽっかりと浮かぶ十三夜の十時過ぎ頃のことだった。 駅ビルの建て替え工事のために設置された鋼鉄製の白い工事フェンスの前で、透明のビニール傘をさし、往来の人々に背を向けて佇む三人の男たちがいた。 静かに凛と輝く月。 曹昂に…

都・死瞬 TOSISYUN

もう、詰んだ 厳冬のある日の夜。パンデミックで仕事と住む家を失った若者が、駅前広場の片隅で商業ビルの壁面を飾る大型ビジョンに流れる映像を虚ろに見ていた。 若者の名前は、瞬と言った。 職は見つからず。 貯金も底を尽き。 住んでいたマンションも追い…

ワクワクする一歩先へ

ええっ。肩透かしかよ 小学校5年生の柊太です。 新学期が始まった間もない頃、僕はLGBTの授業を受けました。 先生からアルファベットの意味を説明があって、『G』の意味で僕は気づかされたのでした。 …あっ。僕ってゲイなんだ… 周りを見ると、クラスメ…

僕の違和感。僕に馴染むまで-カミングアウト その1-

去年、台湾に遊びに行けませんでした。 コロナの影響です。 2010年以来、ほぼ毎年行っていたのですが…。 多分、今年も無理だろうなぁ。 中国で日本に行きたくても行けない人々の間で『日本ロス』が広がっているそうですが、自分の場合は『台湾ロス』です…

僕の違和感。僕に馴染むまで-自覚-

僕は、ゲイです。 こんな風にカミングアウトをする積りは全くなかったのですけどね。 何だか最近、しがらみが無くなり、身軽になってきたこともあって隠してるのも面倒くさくなって、生活が変わるのを好機に少しずつカミングアウトを始めています。 まぁ、そ…

比較論:原チャリ ・自転車・電動キックボート

原付オートバイ(原チャリ)、自転車と並んで、電動キックボードが生活の足となるのか? ちょっと、考えてみました。 レガシーな生活の足として定着している原チャリと自転車ですが、利用における両者の違いは運転免許の要否でしょうか。 この違いのおかげで…

EVキックボードがあれば

『電動キックボード。公道解禁』 記事を読んでいて去年の出来事を思い出しました。 2020年3月。 ある日の朝、叔母の看護ヘルパーと名乗る女性から電話がありました。 「…突然、警察から入ると驚かれると思って電話しました」 「はぁ…」 「叔父様。実は…

さくらショッピング

ガリッ、ガリガリ。 煎餅を噛砕く音。 * 名前:河合真理子 年齢:41歳 属性:専業主婦 家族:亭主、中学2と幼稚園の息子たち 娯楽:通販 恋:宅配の吉本くん * SNS:小泉明日香→河合真理子 * 名前:小泉明日香 年齢:53歳 属性:コンビニバイト主…